これからは蓄電池を利用して節電対策ブログ:22/7/17
幼かったむすめが大好きだったもの、
それはぼくの「耳たぶ」。
甘えたい時、眠い時、不安な時…
いつだってむすめはぼくの耳たぶを求めた。
小さく温かい指で触れられると、
とてもくすぐったかった。
それでも、何だかほんのり心地良くって、
ついついぼくの方が先に眠りこんでしまうこともしばしばあった。
あるばんのこと。
いつもむすめの右側で寝ていたぼくは、
たまたま左側で眠っていた。
むすめが動く気配で目が覚めると、
むすめが右側にいる主人の方に転がっていくのが目に入った。
そして主人の耳たぶを触り始めたのである。
あれ?と思った瞬間、むすめの手がとまり、
目がはっと見開かれるのが分かった。
右、左、ときょろきょろ頭を動かすと、
あわててぼくの方に寄ってきて、
耳たぶを触り始めたのである。
むすめは、ぼくと主人をまちがえたのだ。
でも耳たぶの感触ですぐに気づいたのだろう。
安心しきったむすめの寝顔を見ながら、思わずふきだしてしまった。
むすめに耳たぶをゆだねている時は、
なぜか母乳をあげていた時と同じ気持ちになれた。
求められる嬉しさ、母としての喜び、
無垢な優しさがじんわりと胸に広がっていく…
けれど、むすめはぼくの耳たぶを卒業してしまった。
遠慮がちに触っているなぁと感じるようになったあるばん、
触りやすくしてあげようと頭の向きを変えた時、
むすめの指がふと離れた。
そしてそれ以来、
むすめの指がぼくの耳たぶに触れることはなくなってしまった。
「耳たぶなんて覚えてないよ」と八才になったむすめは笑う。
それでも、ぼくは決して忘れないだろう。
あの頃耳たぶに感じていた小さなぬくもりを…
ささやかな幸せの一時を…